緑内障情報
1)緑内障患者さんの数
房水は毛様体から後房内に入り、瞳孔から前房に移り、隅角のシュレム管からその90%が
眼球外に出て行きます。
(後の10%は、ぶどう膜−強膜流出路から眼球外に出ると言われています。上図参照)
「10の房水」が眼球内に入り、「10の房水」が出て行けば、眼球内の房水の量は同じですが、
出て行く量が8〜9だとすれば、2〜1の量の房水が眼球内に増えていく事になります。
従って、テニスのボールに空気を詰めた様に、中の圧力(眼圧)は上がって行く事になります。
隅角は詰まったり、狭くなりやすいので、その事が眼圧上昇の原因になるのです。
7)視力と視野の変化 目次へ
緑内障の場合、かなり病状が進んでも視力が落ちない事が多いのです。
緑内障の主症状は視力低下ではなく、視野の狭窄だからです。視野の狭窄が中心部にかかってくると
視力の低下が始まってきます。
緑内障の怖いのは、症状がゆっくり進んだ場合、視野、視力の変化に患者さん本人は気が付かない場合が
多く、視野狭窄、視力低下に気付いたときには、病状はかなり進んでおり、治療により視野、視力が快復する
事は殆ど無いからです。 (急性緑内障の場合は違いますが)
従って、それからの治療は視野狭窄、視力低下の進行を抑える為の物にまります。
8)緑内障の種類 目次へ
色々な分け方が有りますが、次の様な分け方が、一般的に使われて居ます。
○高眼圧症
○開放隅角緑内障 (正常眼圧緑内障を含む)
○閉塞隅角緑内障
○その他の緑内障 (ポスナーシュロスマン症候群、ステロイド緑内障、先天性緑内障等)
9)高眼圧症について 目次へ
高眼圧症とは、《2)緑内障とは》と、《3)緑内障の原因》で述べた様に、眼圧が統計的な正常値を上回っても
緑内障の症状を起こさない人の状態を言います。日本では40才以上の人の約1.4%がこの状態です。
緑内障の前駆状態と考えられていましたが、必ずしも緑内障になるわけではありません。
しかし 1年に1%の割合で緑内障に移行すると言われて居ります。
【症状】は特に有りません。「症状が無いから、高眼圧症なのだ」とも言えます。
【治療方針、治療】 眼圧、眼底検査、視野検査等を定期的に行う。
危険因子のある場合(家族に緑内障のある人、眼圧が特に高い場合等)、主治医と相談の上治療を行う。
治療は原発開放隅角緑内障と同じです。
10)正常眼圧緑内障 目次へ
開放隅角緑内障との違いは、現在 分かっている範囲では、「眼圧が正常である」と言う事だけです。
では何故「眼圧が正常なのに」緑内障が起こるのか(?)の疑問に(1)視神経の眼圧に対する感受性の
違い、(2)循環障害の関与等が言われています。 《 3)緑内障の原因を参照 》
【症状】は開放隅角緑内障と同じですが、臨床所見に多少の特徴が有るので簡単に書いてみます。
○乳頭出血(眼底の視神経辺の出血、線状のことが多い)の現れる事が多い。
○視野欠損の起こる場所は視野の中心部で、上方に出ることが多い。
【治療、治療方針】
大筋で開放隅角緑内障と同じです。従って治療は開放隅角緑内障の項を参考にして下さい。
しかし 次の様なことが言えます。
(1)治療する場合、眼圧は低い方が良い。(10mmHg程度だと視野は悪化しにくい)
(2)「循環改善剤(血管拡張剤、カルシウム拮抗剤)、ビタミンB12(内服)等を使用し、緑内障性視野異常の
改善、或いは進行停止が得られた」、と言う報告が有ります。
11)開放隅角緑内障の病像 目次へ
以前はこの形の緑内障が最も多く、緑内障の基本的な病型と言われておりました。
しかし 《1)緑内障患者さんの数》、《多治見スタディ》を御覧になると分かるように、正常眼圧緑内障を
開放隅角緑内障の中に含ませず、別の種類と考えれば、断然 正常眼圧緑内障の数は多くなります。
(《8)緑内障の種類》では、正常眼圧緑内障は開放隅角緑内障の「一病型」として含ませていました。)
多治見スタディによれば、正常眼圧緑内障の有病率は3.60%で、開放隅角緑内障の0.32%を大きく上回ります。
簡単に言えば、「開放隅角緑内障の人は正常眼圧緑内障の人の、1/9しか居ない」と言う事です。
しかし この種類の緑内障が緑内障の最も一般的な病型で有る事は、今でも変わりません。
【症状】
(1)初期には自覚症状はないが、進行してくると、暗点や視野の狭窄を感じる。更に進行すると視力が低下する。
(2)眼圧が高い時は、霧視、虹視(光の周りが、にじみ、虹の様に見える)を感じる事がある。
【検査の結果】
(1)眼圧の上昇は20〜40mmHg程度の事が多い。
(2)隅角は広く、色素の沈着が少ない。
(3)視神経乳頭(視神経が眼球内に入ったところ)の陥凹は拡大し、神経線維層の欠損(網膜が
楔状に黒味かかった濃い色に見える)が認められる。乳頭辺に時々線状の出血が認められる。
(4)視野の変化は、中心近くの弓状暗点から始まり、周辺狭窄に至る事が多い。
【予後】治療をしなければ、病変は非可逆的に進行する。眼圧が高いほど進行は早い。
12)閉塞隅角緑内障の病像 目次へ
隅角の閉塞が有れば、診断は確定するが、眼圧が上昇して居ない時は、難しい時もある。
虹彩の癒着が有れば、ほぼ間違えない。
眼圧上昇の発作と寛解を繰り返し、重篤な状態(失明)に陥る事がある。
【症状】発作時以外は、自覚症状の乏しいことが多い。
【発作時の症状】眼圧は40mmHgより60mmHgあり、時には80mmHgの時もある。
強い眼痛、頭痛、吐き気、嘔吐、視力低下を訴える。以上の症状より脳内病変を疑われ、
脳外科を受診し、治療の遅れの原因になる事もある。
瞳孔は中等度散瞳し、対光反射(光を当てると瞳孔が縮まる反射)は低下する。
視神経乳頭(眼の底に神経が入って来た所)は充血、浮腫を生じる。
【寛解期の治療】将来の発作を阻止する治療、例えばレーザー虹彩切開術等が必要。
【発作時の治療】一刻も早い眼圧降下処置が必要である。48時間以上放置すれば、失明の
確率が高い。
薬物療法 高濃度ピロカルピンの頻回点眼。高張浸透圧薬の点滴静注。
炭酸脱水酵素阻害薬の内服又は静注。 等
手術療法 レーザー虹彩切開。周辺虹彩切除術。 等
【予後】適切な治療を行った場合と、そうでない場合の差が多い。